ハイブリッドMP工法
1.開発の背景
全国には約20万か所の土留め擁壁が存在し、そのうち石積み擁壁は全体の4割以上を占めているとされています。
2011年の東北地方太平洋沖地震や、2016年の熊本地震など、過去の大規模地震では、空石積造擁壁などの倒壊被害が多数報告されており、これらの耐震補強は喫緊の課題となっています。
特に石積み擁壁は、住宅が密集する市街地や斜面地などの狭隘な環境に多く存在しており、限られたスペースでも対応可能な、安全かつ確実な耐震補強工法の開発が強く求められてきました。
2.ハイブリッドMP工法の概要
ハイブリッドMP工法は、既存の石積み擁壁を対象に、「引張」と「圧縮」の2種類のマイクロパイルを打設して補強を行う工法です。
まず、張コンクリートを打設する前に、擁壁の天端部に斜め鉛直方向に「引張パイル」を打設し、さらに擁壁の基礎部に略鉛直方向に「圧縮パイル」を打設します。
その後、擁壁前面と天端部に鉄筋を配した張コンクリートを打設し、各マイクロパイルの頭部を連結することで、擁壁全体を一体化・補強します。
この工法により、石積み擁壁の「転倒」、「滑動」、「基礎部の沈下」を防止します。
「引張パイル」と「圧縮パイル」は、おおむね1.5〜2.5m間隔で配置することで、十分な補強効果が得られ、経済性に優れ、かつ短期間での施工が可能です。

