宅地造成等規制法とは

宅地擁壁と法律

擁壁は、土地造成に伴って生じる土地の段差を安全に処理するために構築される土留め構造物です。土地開発における擁壁は、開発に関係する諸法律によってその構造・種類がある程度規定されており、擁壁の選定に関してはこの点の注意が必要です。

造成工事に築造される擁壁にかかる法令上の制限

擁壁の設置基準や技術的要求事項については主に以下の法律等によって規定されています。
①宅地造成等規制法
②都市計画法
③建築基準法

①宅地造成等規制法について

1)制定の経緯
昭和36年6月、梅雨前線豪雨が各地を襲い、横浜市や神戸市の丘陵地の宅地造成地においてがけくずれや土砂流出が多数発生し、人命や財産に大きな被害をもたらしました。
このため、実効性のある宅地造成の基準が緊急に求められ、翌昭和37年2月に「宅地造成等規制法」(以下、宅造法)が施行されました。

2)目的
宅造法は、がけくずれ又は土砂の流出による自然災害の恐れのある区域において適用されます。建築行為の有無にかかわらず宅地造成全般を対象としており、土質に応じた擁壁や排水設備に実施などの技術基準を明確にして、安全な宅地造成と災害に強いまちづくりを進めることを目的としています。
宅造法では都道府県知事等がかけくずれ等が生じやすい区域を規制区域に指定し、その区域内で行われる宅地造成について規制を行います。(宅地造成工事の許可制)
対象となる工事は着工前に許可が必要となり(一定工事の届出制)、また既存のがけや擁壁についても、放置すると危険なものについては処分庁が改善の勧告や命令をします。(宅地を常時安全な状態に維持する義務)

3)宅地造成工事規制区域
宅造法が及ぶ区域を宅地造成工事規制区域といいます。
規制区域内では、一定規模以上の宅地造成工事等を行おうとする場合、造成主は、知事の許可を受けなければなりません。
平成23年4月現在、宅地造成工事規制区域を指定している自冶体は、22都道府県、15政令市、26中核都市、14特例市で(29都道府県に設けられています)、面積は、10,252km2(日本国土の約2.7%)となります。

宅地造成工事規制区域指定状況

4)許可の対象となる行為等
 宅地造成工事規制区域内の土地で、次のいずれかに該当する宅地造成に関する工事を行う場合には、宅造法第8条の規定により都道府県知事等の許可が必要です。
①切土で、高さが2mと超える崖(30度以上の斜面)を生ずる工事
②盛土で、高さ1mを超える崖を生ずる工事
③切土と盛土を同時に行う時、盛土は1m以下でも切土と合わせて高さが2mを越える崖を生ずる工事
④切土、盛土で生ずる崖の高さに関係なく、宅地造成面積が500㎡を超える工事

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5)宅地造成工事規制区域内における擁壁の技術基準
宅地造成工事規制区域内で行う宅地造成に係る擁壁に関する技術基準は、法第9条をうけ、宅地造成等規制法施行令第6条から第10条に定められていますが、それ以外のものでも国土交通大臣が政令で定められるものと同等以上の効力があると認めた場合は政令で定められたものと同じように使用する事ができます。
テールアルメ擁壁・プレキャストL型擁壁・緑生擁壁は、施行令第14条に規定されている特殊の材料又は構法による擁壁に該当します。これらは、一般的に大臣認定擁壁と呼ばれております。

②都市計画法について

1)制定の経緯及び目的
この法律は、都市計画の内容及びその決定手続、都市計画制限、都市計画事業その他都市計画に関し必要な事項を定めることにより、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もつて国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的として制定されました。

2)都市計画法による擁壁の扱い
都市計画法第29条に「都市計画区域又は準都市計画区域内において開発行為をしようとする者は、あらかじめ国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事の許可をうけなければならない」とあります。さらに、法33条に開発許可の基準が示されており、がけ崩れや地盤沈下等による災害を防止するための擁壁設置等の処置が求められています。がけ面の保護のために設置される擁壁の技術基準は開発指導要綱等により指導されています。

③建築基準法について

1)目的
この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的として制定されました。
2)建築基準法による擁壁の扱い
地上高さ2mを超える擁壁(工作物)は建築基準法第88条の工作物への準用規定をうけ、「第6条に示されている建築主事の確認をうけ、確認済証の交付をうけなければならない」とあります。具体的な擁壁の構造計算基準は、平12建告1449に示されています。

以上が擁壁にかかる法律ですが、一般的には上位「宅地造成等規制法」⇒「都市計画法」⇒「建築基準法」の順に適用されます。